Welcome to Dr. Momoyama's Japanese article site 内科医 桃山容子 DuPage Medical Group |
新型肺炎:重傷急性呼吸器症候群(SARS) 1.ご挨拶 今年に入ってアジアを中心に世界中に新型肺炎の感染が拡大しており、経済的不安と戦争への不安に加えて、皆様の不安材料になっているかと思われます。3月中旬にWHOから、この新しい病気、重症急性呼吸器症候群(SARS)に対する警告が出たことで、アジア地域への渡航が減少し、危機を迎えています。 2.渡航に対する情報 最新の渡航情報は外務省のホームページを調べて下さい。現在のところ中国北京市、広東省、山西省、香港、マカオ、台湾、シンガポール、ベトナム(ハノイ)、カナダ(トロント)、英国(ロンドン)への渡航に対する危険情報を発表しています。この情報はWHO(世界保健機関)からの報告であり、WHO及びアメリカのCDC(米国疾病予防センター)、米国外務省(Department Of
State)のホームページで見ることが出来ます。 3.SARSの症状 SARSの症状は以下のとおりです。 1.発熱(38℃以上) 2.だるさ、呼吸困難・咳・息切れ、全身筋肉痛 3.SARS発生地域への渡航歴、又は発生地域渡航者との接触歴 4.下痢 SARSのウイルスに感染してから2日~10日後に症状が出るようです。(潜伏期間)
4.SARSとはどんな病気なのか 初めてSARSが発生した頃(昨年11月)は、重症なインフルエンザと診断され ていました。病原体は完全には特定されておらず、新型急性肺炎として中国南部(広東省)に発生し、それから香港やベトナム、シンガポールから相次いで報告され、今では世界各地から報告されています。北米ではカナダのトロントに患者数がとても多く、しかも重症だそうです。今のところ死亡率は約3%なのでインフルエンザよりも非常に低いのですが、感染の拡大が速く世界中に拡がっているため、WHOが世界各国の医療機関の協力を得て感染の拡大を阻止しようとしているところです。 今年の3月中旬にはNYC発のシンガポール航空に乗っていた一人の医師が急に呼吸困難を起こしフランクフルトに緊急着陸しました。その数日後、WHOはこの病気について世界の医療機関の協力を呼びかけました。3月末には香港中で発生し「AMOY GARDEN」というマンションの住民全員が感染者とみなされ、隔離されました。4月にはWHOのベトナム部長の先生ご自身がこの病気に罹ってお亡くなりになりました。それと同時にWHOは中国、香港、ベトナム、シンガポールへの渡航に対する危険情報を発表しました。 この新型肺炎は症状が急性に起こり、一般の抗生物質や強力なステロイド剤を投与してもなかなか治らない場合が多いため、患者が急激に増加しやすいと報告されています。現在は抗ウイルス剤とステロイド剤を使っています。アメリカの医療雑誌のNEJMによると1日50本以上の煙草を吸っている方、慢性疾患を抱えている方、医療関係者や飲食店関係者に重症患者が多いと報告されています。重篤にならずに回復される方は多いのですが回復された後も全身のだるさが何週間も続くようです。4月8日現在、WHO発表によると19の国・地域で延べ2,671名の感染者、103名の死亡者を記録し、感染は日々拡大傾向にあります。そのうち1,279名の感染者、53名の死亡者が中国本土(その大部分が広東省)で、そして708名の感染者、16名の死亡者が香港で発生しております。 現在WHOと世界各地の研究所において原因究明が行われているところです。4月中旬にWHOより病因はコロナウイルスの新種だと発表されました。コロナウイルスの代表的なものには「一般の風邪のウイルス」があります。そのCommon Cold Virusが変化したウイルスなのか、それとも鳥やブタから発生したウイルスなのか、いまだに定かではないようです。 今のところこのウイルスに対するワクチンはないのですが、世界中の研究所の協力により約3ヶ月という比較的短い期間でウイルスの遺伝子の解明が進み、治療法を導くことが期待できそうです。(ちなみにHIVの発見と遺伝子の解明は10年ほどかかりました。) 5.対策 現在WHO,CDC,及び日本の厚生省から必要以上の旅行は避けるようにと警告を出しています。特に感染者数がとても多い国は避けることを勧めています。身近な接触が感染の契機となります。今の所、外科用マスクや手袋で感染を防げるのかどうかもはっきり分かっていませんが、病院内の医療関係者以外は特性マスク(N95)の必要はありません。一般の方はまず、うがい・手洗いの励行で感染予防に努めましょう。 やむをえず旅行が必要な場合 日本の外務省は多くの感染者が確認されている中国広東省、香港については、不要不急の渡航の延期をお勧めしており、また、その他の国・地域についても、渡航・滞在に際し、安全対策に十分留意するよう呼びかけています。外科用マスクや手袋の着用と、うがいと手洗いの励行をお勧めします。人混み、特に患者の集まる医療機関に近づくことはできるだけ避けるようにして下さい。38℃以上の急な発熱、咳、息切れ、呼吸困難などの呼吸器症状が出現した場合には、すぐに最寄りの医療機関で受診して下さい。 参考ホームページ: 厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/index.html 外務省 http://www.mofa.go.jp/mofaj/index.html 国立感染症研究所 http://idsc.nih.go.jp/index-rj.html 世界保健機関 http://www.who.int/en/ 米国疾病対策予防センター http://www.cdc.gov/ 米国外務省 http://travel.state.gov/
(2003・4) |
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